「で、おれが一人暮らしなことを不自然とは思わねぇの?」

冷凍庫からアイスを二本出してきて、一本私に差し出して、けんとは言った。

「んー、別に。私もそうだし。」

「あ、そうなんだ。」

「私も親、いないんだ。」

「…『も』って、何で知ってんの?今、高校生ならいっぱい居るよ?親元離れて一人暮らししてるヤツ。」

アイスを一口、かじる。
ソーダ味が、キーンとのどを通っていく。

「勘、じゃあないかな。でも勘五割。お母さんのお菓子の話が過去形っぽかったから。」

「…すっげぇ優しい母さんだったんだ。でも、夫、父さんにおれと一緒に捨てられてさ、おれ食わせてく金もなくて…。」

「…うん、」

「今のおれらみたいな仕事始めたんだよ。で、男につかまっちゃって……。
都合の良すぎる話って、気づけなかった。あのころ、母さんちょっと疲れておかしくなってる時だったから…。」

「……私も同じような感じかな。親の事情に関しては。……お母さん、今何処にいるの?」

けんとのお母さんの居場所をきくのは、さすがにためらった。
きいちゃいけないって、感じた。
けど……




「刑務所だよ。あと六年。」