「今、勘弁してって思ったでしょ?」

「え?!」

「いや、別になんでもないよ?あ、やっぱディズニーにしない?おれ、あれ前から気になってたんだ。」

私の心を読んで気を遣ったのか、おもしろがってわざと言ってみたのか…。
たぶん後者だろうな。一言目を言ったとき、ちょっとにやっとした気がするもん。

けんとはバターをかけたポップコーンとコーラを、私はチュロスとコーラにした。
席について、あとちょびっと時間があったみたいで、2人で少ししゃべった。

「食べて良いからね?」

けんとが、私と自分の間に置いたポップコーンを指さして言った。

「うん。」

「あ、だからそのチュロス、一口ちょうだい。」

「これ?食べたいの?良いけど、はい。」

けんとは私から食べかけのチュロスを受け取り、何だかちょっと悔しそうな顔でサクッと一口かじった。

「こーゆーの、気にしないんだ?」

「私はね。一般的な女の子は気にするみたいだけど。私がこの程度で照れると思った?」

「…ちょっと、思った。」

「残念でした♪れお。あっ」

映画が始まり、暗くなった。
きっと女の子の照れたり、ちょっと困った顔を見て楽しむのはれおだ。
最近ちょくちょくれおが出てくるから、すこーしだけ、すみれも出て来ちゃった。

私は、暗くなったおかげで照れた顔を見られなかっただけ。照れないで居られるのはすみれだけ。
良かった。