「高3の奴もおんねん。あと中1の妹」

「えー!? しかも妹もいたんだ!? 知らなかった」

「言うタイミング無かった」

「も~、なんにも教えてくれないんだから」


これから知っていけばええやろ、と言い、ニヤリと口の端を上げる。


「あ、今度来る時は卒アル持ってこいよ」

「えーっ! 何でそうなるのっ!?」

「今度見せる見せるって、全然持って来んねんもん」


お互いに笑い合っていると、さっきまでの気まずい空気が嘘のように晴れていく。でも、一つだけ疑問が浮かぶ。


これは、“付き合っている”ことになるんだろうか?


恋助から告白はされた。
キスもした。
成り行きみたいなものだけれど。


でも、織理江の方は好きも嫌いも言わなかったし、「付き合おう」という明言もしてない。


「あたしたちってさ」

「ん?」


まだ笑いが冷めきっていない恋助が、微笑したまま振り向く。


その顔を見て、思った。


言葉じゃないんだ、大事なのは。


こうやって笑顔を向けてくれるとか、すぐ隣にいてくれるとか。

お互いに、お互いを想っているということだけで良いんだ。


織理江はクスリと笑ってレポートにペンを走らせる。


「えっ!? 何で笑たん今!?」


“あたしたち付き合ってるの?”なんて、今更な気もするし。


「何でもない」




“今”が幸せなら、それでいいんだよね──。