いつの間に眠っていたのだろう。


新幹線は東北地方にある僕の故郷に到着していて、加奈が僕を呼び起こしていた。

降りてみたら、いきなり寒くて身震いする。

あまりの寒さに眠気も吹き飛んで、くしゃみと一緒に真っ白な息を吐く。


「あっちと随分違うね。雪積もってないだけマシだけど」


加奈の家はこの駅の周辺だ。だから、ここで別れることになる。


「それじゃあタク、伯父さんと伯母さんによろしくね」

「って言っても、また父さんの実家で会うかもしれないけど」

「そうだね。じゃあ、また後でね」


そう言って手を振り、改札へと続く階段を上がっていく。




僕はまた一時間ほど電車に乗った。

窓の外は、もう真っ黒だ。

時々、遠くに暖色の光が見えるが、そのどれもが頼りない。

今まで暮らしていた街の電車から見える夜景とは比べ物にもならないほどだ。



長いこと揺られてやっと着いたかと思えば改札とは反対側のホームだ。

新幹線から降りた時のように、また白い息をスーハー言わせて跨線橋を渡る。

そこから見下ろしたら、線路がちょっとだけ白に覆われていた。

こっちは雪がふったらしい。


古臭い屋根や汚い窓、ヒビの入りかけた階段もすごく懐かしくて、「ああ、ほんとに帰って来たんだな」という感じがした。


改札の出入り口は一つだけで、切符は感じの良い駅員さんがたった一人立っているだけだ。

小さな駅だけれど、ちゃんと売店もある。

向こう──太田と住んでいるアパートのある地域──の駅よりは少し大きくて小奇麗だと思う。



外に出ると、最高のタイミングで車が横付けしてきた。

シルバーのセダンだ。

すぐに窓が開いて、生まれた頃から知っている顔が現れた。


「お帰り拓也!」


槍沢敦志(ヤリサワ アツシ)──僕の父親だ。


笑うと目尻に少し皺が刻まれた。