イヤフォンで両耳を塞ぎ、目を閉じる。


流れ込んでくる歌は、今の気持ちとは全く裏腹に、騒々しいバスドラ、スネア、ハイハット……。


それらの音が頭の中でいっぱいになってしまえば、後は何も気にせずに済んだ。



大きな駅に着いてからは、ちょうど改札を通って来た加奈が僕を見つけて合流した。

イヤフォンを外したら、音楽は霧のように消え去り、代わりに騒音と加奈の明るい声で満たされる。


「久しぶり、タク! 何か顔つき変わった? 背も伸びたし、昔より一段と男の子っぽくなったよね」

「当たり前だろ、高校にもなれば色々変わるよ」


ぶすっと顎を突き出して言い返す。

加奈が嫌みのつもりで言ったのではないことくらい分かっている。

心から僕との再会を喜んでくれていることもすごく分かるのだけれど、やっぱり僕は加奈に抵抗を感じてしまう。

そんな僕の気も知らずに、加奈は僕の腕に絡みついてきた。


「わっ──!?」

「早く行こう? タクの話、いっぱい聞きかせてね」


そう言いながら勝手に組んだ僕の腕を引っ張って、新幹線乗り場へと進んでいく加奈。

恥ずかしげもなく堂々と、よく腕なんか組めるな。恋人でもあるまいし。

不本意ながら、上気したまま新幹線に乗り込んだ。


加奈は切符と席とを交互に見て席を探し、見つけるとニッコリ微笑んで僕を呼んだ。

僕らは隣同士で腰かける。


「何年ぶりかなあ、こうやって二人で出掛けたりするの」

「たぶん最後は……11歳、小学校5年の時」

「へぇ、そんなに昔だったっけ? どうして遊ばなくなっちゃったんだろうね?」


僕も不思議に思っていた。


加奈の実家と僕の実家は同じ県にあって、離れた場所に位置している。

でも毎年の夏休みと冬休みには、示し合わせたように祖父母の家で会うことができた。