「……大丈夫ですか??」


客薄のコンビニにやってきた恋助は、笑って答えた。


「おう! ただの寝不足」

「そうは見えないんですけど……」


癒威は、レジに運ばれた商品ではなく、恋助を見上げた。

額には冷却ジェルシート、赤く火照った顔にはマスク、しっかりマフラーも巻いての完全防備。

ただの寝不足とはよく言えたものだ。


「ホントに大丈夫なんですか? 声もガラガラ……」


気にしながら商品を袋に詰めていく。


「病院行ってください。市販の薬じゃ治らないですよ」


袋を押しつけ、会計をしながらそう言った。


「黙って寝とけば治るって」


手を振って出て行ってしまう。


あの表情も動作も、いつもと変わらないが……変わらない人こそ危険なのだ。

誰にも気づかれないで重病化──なんてことになりかねない。




「……ちょっと、すみません」


カウンターを放り出して裏側に回り、電話をかけた。






* * * * * * * *






その頃、部屋では長めの着信音が流れ始めていた。

音を発しているのは、テーブルの上の携帯電話だ。


織理江はキッチンをそのままにして、小走りに携帯電話を取りに来た。

ディスプレイに表示されている名前を確認してから出る。


「もしもし、癒威ちゃん? どうしたの?」

『急に電話してごめんなさい』

「ううん──あっ」


織理江はキッチンを振り返った。

鍋から噴きこぼれそうになっているのを目撃し、火を止めにダッシュする。

安堵のため息をして、髪をかき上げた。


『あ、今大丈夫でしたか?』

「大丈夫よ! それで、なんだっけ?」

『剣崎さんがさっきコンビニに来たんですけど、すーっごく具合悪いみたいなんです』

「恋助が?」

『病院行かなそうだし……織理江さんには言っておこうと思って』