加奈と同じ高校で成績もトップだから、当然のように国立に進むか、海外に行くかと思っていたのに。

剣崎さんと同じというと、私立大学。

僕が志望している学校でもある。


「僕もそうしようかと思ってた」

「本当に!? 良かった~!」

「『良かった』って?」

「てっきり槍沢くんは、音楽の盛んな大学か、専門学校に行くんだろうなって思ってたから。同じなら、また一緒にいられるね!」


『また一緒に』という言葉に、僕は少し戸惑いを覚えた。

クラスの女子たちの好きな言葉だからだ。

一緒に行こう、とか、一緒にやろう、とか。

何かと女子は友達とつるみたがる。

太田の半分は女子でもあるから、そういう性格を持っていても不自然じゃない。

ただ、僕があまりにも『一緒に』ということに不慣れだったから、くすぐったくて仕方がなかった。


そんな思いを、笑ってごまかし言う。


「だって、それしかなかったんだよ。親には大学出るって大嘘ついてるから」


それに、どうしても首都圏に留まらなければならなかった。

僕の田舎よりも、『夢に一番近い場所』と信じていたから。


「太田こそ、いいの? 医学部ないだろ」

「父さんみたいにはならないよ。槍沢くんこそ、いいの? 咲城さんは東大に行くって」


加奈の名前を出されて、僕は耳が痛くなった。

僕と加奈の関係を知っている人なら、必ず話題にするのだ。

『加奈はこうだけど、あなたは?』と、いつもそんな感じだ。

負けじと彼女と同じ学校を受験すれば僕の株も上がりそうなものだけれど、一念発起したところでどうにもならないことは言わずと知れている。