店内に掛けられた時計が、午後7時30分を指している。

12月24日の今日は、槍沢拓也の誕生日で、みんなで祝うと約束していた。


(急がなきゃ……)


仕事を終えた癒威は、急いでコンビニを飛び出した。

近くにある公園の傍を通った時、ふとジャングルジムの辺りに人影が見えた。

辺りはもう真っ暗で、その顔立ちはハッキリしなかったけれど、シルエットや髪に触れる時の所作から、織理江だと思い、そっと声をかけた。


「織理江さん──」


と声をかけてから、「しまった」と思った。

よく見ると、近くにもう一人。


「──と、順二さん……?」


織理江が、遠くから声を投げかけてくる。


「あ、癒威ちゃん! ごめんね、ちょっと遅れるかも。先に行って待っててくれるー?」

「分かりました! じゃあまた後で」


ひらひらと小さな手を振る織理江に、癒威も手を振って去っていく。



間もなくして、織理江は順二を見上げて言った。


「今日はありがとう。話聞いてくれて、おまけに買い物まで付き合ってくれて」


いいんだよと首を振り、織理江が買った品々の入った袋と、ケーキの箱を渡しながら言う。


「荷物、運ぶの手伝おうか?」

「大丈夫だよ。そんなに重くないし。ありがと」


順二は微笑み、指先でちょっと頭を掻いた。


「なあ」


織理江が再度、順二を見上げる。


「この前俺が言ったこと、覚えてる? 一緒に組んで欲しい、ってやつ」

「うん……」

「冗談とかじゃなくて、本気だよ」


え? という顔で驚き見上げてくる織理江を、順二は冷静な眼差しで見つめ返した。


しかし、静かに息を吸い込んだ後すぐ、僅かに目を逸らし、呟く。


その、言葉は──



「──好きなんだ。織理江が」