季節は12月。

ブラインドの隙間に、時折ちらちらと雪の姿が見えていた。

ベッドに横たわり、それをぼんやり眺めていた夜。

太田の溜め息が僕を現実に引き戻す。

別に寝ていたわけではない、考えていたのだ。


「……槍沢くん、もう寝た?」

「なに?」


僕は振り返らず、横になったまま窓に向かって返事をした。


「……順二さんってさ、もう剣崎さんとは歌わないのかな」

「あれから1週間も経つのに、急にどうしたの?」

「なんか思い出しちゃって」


そう、と軽く頷いて、僕はあの日の出来事を太田に打ち明けた。


「太田が剣崎さんを探しに行った時、織理江さんが順二さんに『組まないか』って言われてた」

「それ本当?」


驚いた太田が、勢いよく体を起こした。

そのせいで毛布を引っ張られたので、僕は不快な顔をする。


「寒い」


と一言うと、彼はそろりと横になる。


「もしかしたら順二さん、また3人で歌いたいのかな」


そんな風に僕は言ったけど、心のどこかで納得がいかなくて気持ちが悪かった。


わざわざ、織理江さんにだけ話しかけた順二さん。

もう一度やり直したいのは、剣崎さんを含めた3人ではなくて、あくまでも織理江さんとだけかもしれなくて。

もしそうなったら──ならないかもしれないけれど──僕はもっと納得がいかない気がした。

織理江さんの隣にいるのが剣崎さんじゃく、順二さんになってしまったら、何だかとても違和感がありそうで……。


だが、太田からの返事はなかった。

心配して寝返って見たけれど、彼はじっと天井を見つめていた。


「どうしたの?」


呼びかけると、目線だけが僕の方に向けられる。


「槍沢くんは今歌ってること……遊びだと思ってる?」


図星を指され、胸が轟く。

僕も天井を見上げて、答えた。