未だに行き先不明だが、駅に着くと、海里がキョロキョロしてる。

「どうしたの?」
まさか…、と思いつつ訪ねてみると、

「切符の買い方が分からない」

ははは。やっぱり。もう、お約束だね。

「そんな事だと思ったよ」

「ごめん」

「ほら、そんな事ぐらいでシュンとしないの。行き先知らないと買えないから、降りる駅名を教えて」

本当は最後まで内緒にしておきたかったんだろう。シュンとした海里が小さな声で呟いた。

「○○駅…」

え? 意外と近くって言うか、かなり近くだ。私の通勤経路にある駅だし。

「○○駅でいいのね?」

うん。と気まずそうに頷く海里をかわいいと思いながら、私は説明を始めた。