「あのね、海里。ご飯を炊いた事はないの?」

海里は涙目のまま頷いた。

「だってぇ。炊飯器なんて使った事ないし、見たこともないんだもん」

はぁ。こんな人も今時いるんだね。私なんか、両親共働きだったから、小さい頃から家事は出来たのに…。

「お米は専用カップで計ってからお水でよく研いで、炊飯器に入れてからメモリまで水を入れて…」

もうそこまで説明した時点で海里の目は丸くなってるし。

「お米って洗うの? 洗剤で?」

「それは…、笑える冗談よね?」

「ううん。本気」

私は目の前が真っ暗になり、頭が痛くなって来た。

「お米は洗剤では洗わないよ。もちろん、野菜もお肉もお魚もね!」

目の前の海里はマジで固まってる。

「どうかした?」

「もう塩鮭、さっき洗剤で洗っちゃった…」

びっくりして声が出ない。