私は取りあえず、気持ちを持ち直し、彼の手を優しく外すと、お風呂場に行き、シャワーを止めてから、彼に話し掛けた。

「あの…。私隣に住んでいる香西です。私でお力になれる事があったら協力しますので、取りあえずシャワーを浴びて来て下さい。タオルはありますか?」

彼はコクンと頷くと、ダンボールをひっくり返えした山からタオルとスウェットを拾うと大人しくお風呂場に向かって行く。

「帰らないでね」

ウルウルした目で見つめられて。私はまたドキッとした。

「帰らないよ」と言葉を返すと彼は安心したかのように微笑むとお風呂場に消えて行った。