愛しい


思わず大声が出た。
やっちゃったよ。
あ、でも泥棒も振り向いた。
(※泥棒じゃない)

「…」

あたし、めっちゃ不審がられてる。

「あ、あの、その本、
 譲ってくれないかな?」

「なんでなん?」

関西弁だ。パンチきいてるな…。
でも、あたしも負けてられない!

「あたしの方が見つけるのはやかったから」

「そんなん、普通は
 とったもん勝ちやろ」

うっ……

「とにかく欲しいの。
 お金なら上乗せする」

「金の問題ちゃう。
 自分で他の本屋行って
 買うなりせえや」

そりゃそうだけど…。
出来ないから欲しいんだよ。
ユウトにここの本屋に行くって
言ってるから…。

「………お願いだから!
 譲ってよ!この通りっ」

めちゃくちゃ大げさに
手を合わせて頭を下げた。

あたし、外出できるの
月に一回あるかないかだもん。

これぐらいしなきゃ、この本読めない。