「俺、車で待ってるから
 早く買ってきな。」

「うん。」


あたしの大好きな作家、
立石槙の本はまだ無名。
ユウトの情報は随分レアなもの。
最新であっても一番目につく場所になんて
ディスプレイされない。
行きつけの本屋でも見つけるのは困難だ。


「たていし、たていしー…
 あ、あった!」

あたしがそれを取り出そうと
手を伸ばしたとき、
横からスッと知らない男の手が伸びてきた。

立石槙の最新の一冊を、
たった一冊を知らない男性にとられた。

本を持って去っていく後ろ姿がムカツク。

横取りだ!必死で探したのに!

このままじゃダメだ!取り返さないと!


「待って!」