「この空港には、トイレが2つあります。そして階段も東と西で2つ。僕は2階のトイレにいたので、恐らく…」


「私が1階に居たとき蓮は2階にいて、私が片方の階段を使ってるときに、蓮はもう片方の階段を使ってたってこと?」


「はい。ジェット機に行ったら小百合さんに会って、真央さんがまだ空港にいると聞きました」




それで、蓮は私を探しに来たんだ。




はぁ、何という入れ違い。








「でも、入れ違いになって良かったです」


「え?何でよ」




ニッコリ微笑む蓮。



この顔は







魔王の顔だ!!









「真央さんに、お仕置きできましたし」


「げッ……;」



「驚きましたよ。可愛いお腹を見せて、僕の事を待ってくれていたんですから」


「うわわっ!///そ、それはっ」



「おまけに、荒い息に汗ばんだ頬」


「言うなっ!///」



「誘ってるとしか思えませんでした」



「何処にも誘ってないッ!///」




「真央さん」




不意に、魔王が私の顔を覗き込んだ。

ドキンッ…


だからぁッ……
あんたのドアップは心臓に悪いんだってば!



「誘う、とは」

















チュ





「ッ!///」




「こういう意味の事を言うんですよ?」



―――さぁ、ジェット機が見えてきましたよ。


そんなことを言う蓮は、なんてことの無い顔で。




私だけ真っ赤に染まっていて悔しい。









それに、

今の柔らかい感触が、バッチリ記憶に残っているのも




何だか悔しかった。
















狼は皮が剥がれても

やっぱり、狼。