「じゃ、行こ」





握っていた手を離す。





てくてくと出口へと歩いていく。








でも、





足音が聞こえない。




「蓮?」






クルリと後ろを振り返ると







「え?」









蓮が、




泣いてる?





びっくりして蓮に駆け寄ると、蓮は優しく笑った。





あ、良かった。




泣いてない。








「……真央さん、手を出してください」






素直に右手を前に出すと、ひんやりとした手がそっと触れた。




「ありがとうございます」




す、と頬に手が添えられて





ゆっくりゆっくり、




頬に唇が落とされた。






「…///」



「元気が出ました」

――ありがとう




そう言って、さっきとは違う、


優しくて柔らかい…


蓮らしい微笑みを浮かべた。




「だって、僕は僕ですもんね」




キュ、と握る手に力が込められる。






それだけ


たったそれだけなのに。




どうしてこうも、胸が締め付けられるんだろう?






はにかみながら歩く蓮に





また激しく動き出す鼓動。



そんな顔、しないでよ。




ますます、




胸が苦しくなる。











この気持ちは何?





少し怖くて、でも満足感に包まれたような気持ち。





こんなの、生まれて初めて感じる。






胸が溶けちゃいそうなくらい、熱いんだ。








この甘い空気をどうにかしたくて、必死に話題を探す。




あ。



思い出した。




「あ、あのさ!そういえば、蓮って何処にいたの?」



そう言って、私より少し高い位置にある、彼の顔を見上げた。


さっきのはにかみは何処にいったのか……いつもの無表情に戻ってる。




「トイレです」




「え?でも」


私が行ったときには誰も……



「入れ違いですよ」

「入れ違い?」



蓮は私に視線を落とす。

うわ、流し目したみたい。
色っぽい…。