重い瞼を持ち上げたら、真っ暗だったから。


だから、本気で死んだかと思った。








「蓮?」


「………」




最初は天使かと思った。



でも、体に感じる温もりと、覚えのある大好きな匂いで

本物だ、と思った。




「真央!良かった。良かった!」

「真央!ママよ!分かる!?大丈夫!?」

「ああ、真央ちゃん!本当に、本当に良かった……!」




真っ暗な視界のまま、色々な人に声をかけられ困惑する。




「ちょっと海城蓮!さっさと離れなさいよ」


叩かれたのか、私にも軽く振動が伝わる。


「……」

無言のまま、イヤイヤと頭を振る蓮。抱き締める腕に力がこもった。

ぶわ、と胸に広がる甘い愛しさ。


まだ上手く動かせない手で、蓮の体に触れた。



震えてる。



「蓮」


「……」


「泣いてるの?」


「ッ……ぅ」




首にポタリと落ちた雫。

蓮が泣いてる。



泣かないで、と背中を擦った。



「大丈夫だよ」


「…ッ…真央」


「うん。大丈夫」



私、生きてる。





温かな胸の中で、しみじみと実感する。


良かった。


良かった……。








「吉岡さん。気分はどうですか」



初めて聞く声に、医者だと判断する。



「大丈夫です」



「本当に、良かったです……。丸3ヶ月は意識がありませんでしたからね」



「3ヶ月!?」




嘘、いつの間に……。



「いえ、大丈夫です。なんか、もう胸いっぱいって、いうか……」




生きてる、んだ。





ジワリと涙がにじんだ。








「………あの、非常に言いづらいんですが」



医者が困ったように頭を掻いた。