「ママ、彼氏なんていたの!?」



おいおい!初耳だぞ私は!
アイロンを掛けていた手が止まる。





「そぉよ?すっごくいい人だから、きっと真央ちゃんでも仲良くなれるわ!」

「絶対無理!」




じゅわ~



あっ、ヤバ;

Yシャツの上に乗っけていたアイロンを慌ててどかす。



危ない危ない、誰かさんのせいで焦げるところだった…。



「でももう来ちゃうわ。諦めてッ」



「絶ぇっ対無理!!」




だって私は



男性恐怖症なんだよ!?
マイマザー!ちゃんと分かってんのか娘のこと!


ゴシゴシゴシゴシ


イライラをアイロンにぶつける。だはー。やってられっかぁ!

ママはいつもこうなんだもん!
そのせいで私が今までどれだけ苦労をしたと思って…!












「真央ちゃん」






ヒクッ


ママの声に一瞬、背筋をヒヤリとしたものが走る。



さっきまで踊るような声だったのに…。



ああそうだ。
ママがこの声になるときは真面目な話をするときだ。
私はアイロンを止めて、ママの目を見た。


「大丈夫よ」



「…」




「あの人みたいに、あなたを傷つけない人だから、大丈夫」


「…」




ホントに、ホントにそうなの?
いくらママでも、まだ信用できるわけ無いよ。


「大丈夫よ。ね?」




「……」




肯定も否定もできなくて、私はママの目を見たまま、何も言えなかった。