●●蓮side●●







―――242便にご搭乗の方は……。






空港に響くアナウンス。



そろそろ、ですね。



大きなスーツケースを持ち、ベンチから立ち上がる。




周りにいるのは会社の社員の人々。


嫌でも、これはビジネスなんだと思い知らされ


溜め息。






でもこれは僕の夢で

僕が選んだ道。





弱音なんて吐いてられませんよね。





深呼吸をして、歩き出す。









本当に、早かった。



この日が来るのが。







これで最後だなんて、なかなか実感が湧かない。




アメリカには、僕の高校の友達もいないし


行きつけの店も


あの町並みも





真央さんの家も




真央さんの部屋も







真央さんの何一つ、無いわけで……。









空っぽの場所に、行くんですね。









そう思うと、色々な感情が身体中に走るけれど






いい加減、やめましょう。






真央さんとの思い出が無くなる訳じゃないんだ。






そうだ。



僕が死にに行くわけでも無いのだから。










少し軽くなった足取りで、階段を上る。