中に入った瞬間、フワリと鼻を掠めた甘くて爽やかな匂い。
目の前に広がるのは、ほとんど白で統一された明るい世界。
清潔なシーツが、シワも無く綺麗にひかれたベッド。
必要最低限の物だけ置かれた机。
ゴミ一つ見当たらないフローリングの床。
シンプル&清潔。
まさに蓮のような部屋だと思った。
そんな白い世界に、
ポツリと混ざる黒色。
開かれたクローゼットの前にいるその人は……
会いたくてたまらなかった
あの、蓮だ。
夢じゃない。
でも、まだ信じられない。
1ヶ月振りに会ったというのに、蓮は無表情でこちらを見ていて。
目があった瞬間、胸が高鳴ると同時に
誤魔化せないくらいの痛みが押し寄せた。
蓮は、
そうやっていつも飄々としてたよね。
変わってないね。
溢れ出しそうになる涙を必死で押し止めて
黒曜石の瞳を見据えた。
この澄んだ瞳は
今私を映している……。
「……蓮
久しぶりだね」
薄く微笑む。
会いたかったよ
ずっとこの日を待ってた
何で拒絶してたの
でも私は蓮が好きなんだ
伝えたいことは
詰まりに詰まってパンクしそうなくらいあった。
でも、言えなかった。
蓮の顔で、蓮の声で、
直接、拒絶されるのが怖かったから。
やっぱり私は、臆病だ。

