愛、シテあげる。*完*






「ただいまー」


響く私の声。
この前までは
『おかえりなさい』
と返ってきていた返事。

虚しい。




リビングとキッチンを覗いてから、階段を上がる。
やっぱり蓮は居なかった。

でも、私を避けているのは……。



梶谷くんの顔が浮かぶ。

勇気を出さなきゃ。
蓮のことが好きなら、勇気を出さなきゃ。

勇気を出して……聞かなきゃいけない。

じゃないと私も、踏ん切りがつかないから。



自室の前で立ち止まる。すぐ近くには、『蓮』と書かれたプレートがぶら下がっている。
あの扉の向こうに、蓮はいるかな。

もしも蓮がいるなら……蓮の部屋に飛び込んで、あの体に包み込まれたい衝動。


蓮の顔が見たい。
蓮の声が聞きたい。
蓮と話したい。


色んな思いが胸でひしめきあって、何かが喉元まで込み上げる。

でも私は、怖い。
まだ怖い。

蓮に拒絶されるのが。
蓮に冷たい視線を向けられるのが。

蓮の温かみを知ってしまった以上、冷たさを倍に感じてしまう。






ドキドキしながら、蓮の部屋の扉の前に立つ。
ノックしようと手を上げると


――ガタ




ぎゃっ!

……と声を出さなかった私はえらい。


今、確実に蓮の部屋から

音がした。


ヒヤリとする背筋。
一気に鼓動を刻み始める心臓。


うわ……さっきまであんなに勇気があったのに、嘘みたいにそれはしぼんでしまって……。


ど、どうしよう。やっぱり止めようか?いやでもここで止めたら、2度とチャンスは無いかもしれないし。ぐ……しかし怖いな。




でも



でも







怖いよりも

蓮に会いたい気持ちのほうが大きいから




うん。

ここで引き下がれば女が廃る。




……えいっ!