「ちょっともう!」



1人呟きながら校舎の角を曲がった。



「…あ…」



途端に、書類のことなど忘れて、二湖は息を飲んだ。

その場所は、中庭のようで、一面に満開の桜の木が広がっていた。



「桜、だ…」



この景色を懐かしいと思うのは、やはり自分が日本人だということだろう。


アメリカにも桜はあるが、やはり日本のものとは何かが違う。


もっとじっくりと見ていたかったけれど、二湖はふと本来の目的を思い出した。


「ヤバい、書類、書類」



視線を下に向け、書類を探す。


数メートル先に、それは落ちていた。


ホッと胸を撫で下ろして、すぐに拾おうと手を伸ばしたが、それより先に、誰かが書類を拾い上げた。



「…?」



不思議に思い、顔を上げる。



目の前には制服を着た、男子学生が立っていた。