「叔父さんは変わんないね。最近、パパなんて禿げてきちゃって落ち込んでるよ」


二湖が歩きながらそう言うと、諒介は可笑しそうに笑った。



「兄貴は父親似で俺は母親似だからなぁ。気の毒なこった」



諒介は二湖にとって父方の叔父。

父親の歳の離れた弟で、確か今年で38になるはずだが、それ以上に若く見える。

自由奔放で快活な叔父が二湖は昔から大好きだった。


「そういえば、二湖。必要な書類は持ってきたか?」

「え?ああ、これでしょ?」



諒介に言われ、二湖は鞄の中から数枚の紙切れを引っ張り出した。



「あっ!」



その瞬間。


春の気まぐれな風に誘われるように、一枚が二湖の手を離れ、ふわりふわりと飛んで行く。



「馬鹿!あれがなきゃ、明日から学校通えねぇぞ!!さっさと取ってこい!」


「わーかったよ!」


別にそんなに怒らなくても、と思いつつ、二湖は書類が飛んで行った方向へと駆け出した。