「…ねぇ、諒介おじさん、日本ってコンパクトな国じゃなかったっけ?」



二湖は、学校医である叔父、一ノ瀬諒介【いちのせりょうすけ】の隣で呟いた。


季節は春。


日本の新学期に合わせて、二湖はアメリカから私立宝華学園高等部に編入することになった。


今日は登校第一日目。


アメリカでは珍しい、制服に身を包み、意気揚々と学校に出向いたのはいいのだけれど、しょっぱなから、そのあまりの広さに呆気にとられた。



「ここは学園都市みたいなものだからな。この敷地内に幼稚舎から大学院まで全部入ってるぞ」


「へぇ…」



その広さは、二湖が今まで通っていたハイスクールの五倍はありそうだ。



「呆けてないで、さっさと行くぞ。今日はとりあえず挨拶だけってことになってるからな」



二湖は諒介の言葉に頷いて、歩みを進めた。