「何、今の声?」


「さぁ?」



二湖が首を傾げると、虎太郎もそれに倣う。



「向こうの方からだよね?」



何だかやけに気になって、二湖は声がする方に近付いた。



「おい、二湖!!」



嫌だ嫌だと言いつつも、極度のお人好しの虎太郎は結局、二湖の後を追う羽目になる。


声の出所は、表からは死角になっている中庭の方からだった。



「二湖、ちょっと待てってば!」



二湖が中庭に足を踏み入れるより早く、虎太郎がその肩を掴み、校舎の影に隠す。



「とりあえず、様子見ようって」


そう言って、2人でこっそりと中庭を見やった。



「…あの人…」



そこには、あの冷聖院一哉と密を含めたキングの生徒たちと、ナイトの生徒たち、それからその2つのグループに挟まれるようにして、おとなしそうな女の子が1人いた。


しかも、ナイトの中の1人は、何故か制服がびしょ濡れだった。



「あちゃー。キングとナイトのリーダーの鉢合わせだ」



虎太郎が頭を抱えてそう漏らす。