「別にキングに誘い入れようなんて思ってないから安心しろ」



図星を指されて、二湖は思わず笑ってしまった。


密なら、友達になれるかもしれない。


そう感じて、言われるままに密の後を追った。



人気の少ない廊下の端にある階段を昇ると、無機質な扉が見える。


踊り場には、立ち入り禁止の文字。


でも、密はその札に見向きもせずに進んだ。



「えっと、あの、密?大丈夫?ここ立ち入り禁止になってるけど?」


「ああ、平気だ。規則は破るためにあるものだろう?」


「…やっぱり日本でもそう?」



二湖が答えると、密は当然のように頷いて、軽くウインクをする。


ガチャリと音を立てて扉を開けると、そこは屋上だった。


柔らかい春の風が吹き、2人の髪をさらう。



「気持ちがいいだろう?ここに来ると、やっとまともに息が吸える気がするんだ」


陽の光に目を細めて、密は言った。