「一ノ瀬さんは、キングに入られますでしょう?」


「何言ってんの?ナイトに決まってるだろう」


「…」



未だかつて、こんなにもランチタイムを苦痛に感じたことはない、と二湖は思った。


朝から休み時間の度に、どちらに入るのかと詰め寄られ続け、挙げ句の果てにまともにお昼も食べさせてもらえない。


いい加減に嫌気が差して、二湖はガタンと音を立てて立ち上がった。



「一ノ瀬さん、どちらへ?」


「…ちょっとトイレに」



早口で告げて、半ば逃げるように教室を飛び出した。

すれ違う人がみんな、自分に注目しているようで、何だか居心地が悪い。


どこか1人になれる場所はないかと探していると、後ろから声をかけられた。



「おい、編入生」


条件反射で振り向くと、そこにいたのは、あの美少女、密だった。



「獅堂院さん…」


「密でいい。それより教室じゃあ騒がしくてお昼も食べられないだろう?良かったら一緒に来ないか?静かな場所を知ってるんだ」


そう言って、悪戯っぽく笑う。