「バカみたい、か。確かにな。けど、まぁ人間なんてそんなもんさ」


「え?」



二湖が振り向くと、諒介はいつの間にか煙草をふかしていた。

煙草はくわえたまま、器用にしゃべる。




「人に嫌われたくない。一人になりたくない。無難に生きたい。だから煩わしいことには目を瞑って、見てみぬふりをする。そうすりゃあ傷付くことはないからな」


「それは、そうかもしれないけど…」



諒介の言葉はもっともなこと。


だけど、二湖にはどうしても納得できない。


釈然としない顔をしていると、諒介がにこりと笑った。



「ああ、でも二湖なら、何とか出来るかもしれないな」


「どういう意味?」


「んー?別に深い意味はないけど」



諒介と話をしていると、時々こんな風にはぐらかされて、聞きたいことが聞けなくなったりする。



「何企んでるんだか知らないけど、私に期待されても困る」