センセイはうーん…うーん…と悩んだ末、私を後ろからギュッと抱き締め、観念したようにため息をついた。
服の上からセンセイの体温を背中いっぱいに感じる。
「うそ。はぁー、色々言い訳を考えてみたけど、単純に君が気になってたっていうのには変わりない。三十のおっさんが中学生レベルのおっかけをしてたんだよ。ちょっと恥ずかしいね。あーもう、格好悪いな。」
センセイはわしゃわしゃと頭をかき、ちょっと拗ねたような顔をした。
なんか、貴重。
センセイの拗ねた顔なんて初めてみた。
私はなんだか本当幸せで、初めて自分からセンセイにもたれかかった。
「何回かカウンターでやり取りもしたんだよ?でも君はやっぱり気付かない。僕も意地になっちゃってね。君が気付くまでこっちから言うもんかーってね。」
「あはは。」
「気付くわけないんだよ。だって君はボサボサの客と普通に喋ってただけなんだから。」
私は一生懸命記憶をさかのぼる。
でもやっぱりまだバイトを初めて一年も経ってなかった頃の事っていうのもあって、思い出せない。
「まぁ当時は、無意識にそんなんじゃないと思い込んでたんだけど、ある日宅配便の若い男の子にゆな君が口説かれてるのを見てしまってねぇ。」
「へ?!そんなんありましたっけ?」
「あったんだよ。」


