「君が僕に写真が好きで好きでたまらないって事を思い出させてくれた。カメラはただの道具じゃなくて大切な相棒。それも思い出させてくれた。それは僕に取って人生の大きな起点だったんだけれども、君にとってはそうではなかった。」
私のお腹の前でセンセイの綺麗な指が軽く組まれている。
「メモリもなんだかんだで返しそびれて、僕はまた店に足を運んだ。」
センセイの顎が軽く私の頭に乗せられる。
「するとどうだい。君は1ミリも僕の事を覚えていなかった。ちょっとびっくりしたよ。」
グリグリと罰ゲームのように頭の上に乗ったセンセイの顎に力が入る。
「いてててっ!す、すいません~~っ。」
「ふはっ、でも客層を見てそれも仕方ないかなと思ったよ。」
カメラの調子が悪いとご老人が持ってきたカメラの中からゴキブリが出てきたり、
適当にプリント機をいじっていた小学生がなにかやらかして本社にまで電話して機械の補修をしていたり、
就職用の証明写真を何十回も取り直す学生が来たり、
世間話だけしに来たおばあちゃんの相手をしたり、
「とにかく君の所のお客様はキャラ濃すぎるんだよ。」
「あー、まぁ、そういえば。」
お客さんが少ない割にはよくバタバタしていたなぁ、とか考える。


