「その日は雨でね。」
私の住む田舎の奥には結構有名な山々や谷がある。観光客も多いけど、雨の日も多い。
センセイもその日、山の方で撮影があったらしいのだけど、途中で雨に見まわれて撮影は中止。ついでに私の事を思い出し、店に寄ってみたのだそうだ。
…
『あのー…すみません』
『はい、いらっしゃいませ。わっ外すごい雨だったんですね。』
天気が悪い事もあって、お店はガラガラ。
奥に座る店長らしきご婦人と、高校生ぐらいのバイトの子一人。
ぼーっと観察していると、バイトの子がパタパタと姿を消し、手にタオルを持って出てきた。
『良かったらお使い下さい。』
『あ、どうも…。』
そこで初めて自分がびしょ濡れであることに視野を向けた。
『(あー、何も気にしてなかったな。)』
最近疲れてるのかな。
手渡されてなんとなく使ったタオルを見る。
リラックマ…。これ私物なのか。
可愛らしい柄のタオルを良くこんなおじさんに貸してくれたもんだ。
最近の若い子なのに優しいねぇ。感心感心。


