「僕はその作品がとても好きでね。ちょっとがっかりしながら、本当の撮影者を聞いたら、なんと僕の会社と同じ系列店のバイトの子だっていうんだ。」
本人もカメラの調子がおかしくてたまたま寄った店でたまたまカメラを見てくれた子が、確認の為にそこら辺りにあった自分の私物のメモリを差し込んで動作確認をして、そのまま抜き取らずに渡してしまったらしい。
そのアマチュアの人はちょっとスランプになっているのも手伝って、悪いと思いつつそのメモリに入ったデータを自分のものとして発表してしまったようだ。
「他の審査員も気に入っていてね。基本もなってない荒削りな作品だけど、何故か引き込まれてしまう。
ああ、ありがとう。」
おしゃれなシステムキッチンを少しお借りして、センセイにホットココアを煎れる。
ポットが見つかって良かった。
センセイはココアを喉にゆっくり流し入れ、ほっと息をつく。
温かいから少し顔色も良くなったみたい。
陶器みたいな肌に少しだけ血の気がかよう。


