「セッ、いいんですか?!」
大事な写真じゃなかったんですか?!
慌てながらセンセイを見上げると、いつの間にかセンセイの胸の中に閉じ込められていた。
「…嫌な思い、しただろう?」
…センセイの胸にすっぽり顔を埋めると、なんだかそれだけで幸せ。
私は静かに首を振る。
「あの婚姻届は別に気にしなくて良いよ。いつか僕が本当に愛しい人が出来たら、もっと大事にしてあげなさいって、戒めで、たぶん冗談半分で渡されたものだけど。僕はなんとなく、一生縁がないんだろうなと思ってた。」
君が思っているよりも、僕という人間は氷みたいに熱がない奴なんだ。
そう言ってちょっと寂しそうに笑う。
「仕事の事しか考えなかったよ。その他は案外どうでもよかった。」
気が付いたらこの業界でセンセイの名前を知らない人はいなくなった。
そんなときに、センセイが審査員をしていたコンテストで不正が発覚。
「入賞に決定した作品の持ち主に色々質問してたらね、どうもおかしくて。問い詰めたら、自分で撮ったものじゃないっていうんだ。」


