頬をつたった涙が、床に落ちる。
一つ。
二つ、三つ。
「ゆな君。」
センセイの優しい声が空気を和らげる。
「ゆーなー君。」
さっきまでとは違う、柔らかい笑顔で、センセイが私の名前を呼ぶ。
大好きな、
私を呼ぶセンセイの声。
「こっちにおいで。」
フワッと腕を導かれ、さっきまで必死に抜け出した場所に、簡単に連れ戻されてしまった。
「…なんですか馬鹿センセイ。」
俯きながらふてくされたような声しか出ない。しかも鼻をすすりながら。
そんな完璧拗ねモードの私を、子供をあやすみたいに腕の中に入れ、よしよしと頭を撫でる。
優しい優しいセンセイ。
なんでか焦りもしないセンセイ。
こんな三十路男に弄ばれてる乙女心なんて、センセイにはわかんないんだろうな。
もう、泣いたせいで頭がボーっとして何が何だか分からなくなりながら、センセイの胸に顔をうずめる。
鼻をずるずる言わせながらなすがままに顔をうずめる。


