小さな口に小動物みたいに、焼きそばを頬張るキョンにもう一度マサキは尋ねた。
『ねぇ、キョンなんでココ流れ星なの!?』
さっきより大きめのマサキの声は今度はキョンに届いたみたいで、頬張った焼きそばを甘いサワーでながしこんでから、マサキに視線を合わせる。
 『あ、それまだ途中だからみないでよ。』
見ないでって言っても嫌がるそぶりはなく、流すだけのキョンはまた小動物のように小さな口でモグモグ、モグモグ焼きそばを食べ初めた。
今聞くな!って事らしく、キョンが焼きそばを食べ終えてからまたまたきいてみた。
『こないだの『猫』でやった時にフラッシュがパチパチ光ったでしょ、その時浮かんだイメージを書いただけで完成しないかも。』

キョンは食事中は話しをしない、食べながらとか話しをしながらだとか何かをしながら何かをすると極端に物事のスピードが遅くなる。
だから食事だけはそれに集中する。冷めて美味しくなくなるからだと前に聞いた覚えがあった。
今食べていた焼きそばは酒のツマミじゃなくて、キョンの今日の夕御飯だったらしい。

「完成させてよ、上手く乗りそうだから。」
キョンが加わってから、詩の方はほとんどキョンが書いている、曲に合わせてだいたい詩を書く形で、たまにキョンのノートの中から出来上がる事もあった。
「あん時の写真てどうなったの?」
「さあ?でも揉めてなかった、俺も良くはみなかっけど」
 キョンがマサキに聞いたがマサキも事情が良くわからなかった。
客どうしの喧嘩なんて珍しくもなく事が大きくならなければ、逆に盛り上がったりもした。
「カメラマン君は一応出入り禁止にしたけど 昨日もきてたよ。」
『猫』のスタッフで毎回手伝ってくれる、鉄っさんがいい感じに酔っ払いながら、向かいの席のキョンの隣に座った、ちょっとキョンとの距離が近いと感じながら、ハゲ始めている鉄っさんのオデコに視線をずらした。
「じゃあ、鉄っさん追い返したの?」
キョンが同じくオデコに話しかける。
「初めはそうしようとしたんだけど、なんか悪い奴じゃなくてな、カメラだけ没収していれてやったよ。これからもそうしないと中には入れないって言ってある。」