「オイ、ふざけんなよ!」

カメラを振り払われる衝撃。

せっかくの四角い最高の世界から引き戻してくれた男がイロの胸倉を掴む。
さっき無視した男。
髪は肩より長く、ジャングルに住む部族みたいな大きな穴が両耳に空いていた、爬虫類みたいな目が細い眉に妙に似合わない。掴んだ腕は鳥ガラみたいに細くて、非力に見えた。
イロは鳥ガラ男が加える力のまま後ろへ、背中で隙間のない人の間を無理に下がり続けた。
隣にいた友人は見失い。
最後に壁にぶつかり衝撃を受ける。
カメラを掴む手を確認に力を込めた。
ピーピーと怒鳴り続ける鳥ガラ。
そのうちに友人がやっとの事で追い付き間に入って鳥ガラ詫びていた。
それでも歌声は流れ続け体を満たしていこうとする、ひかりは輝き続ける。
今この場のこの景色詫びる友人、ピーピー鳥ガラ

「最高だよ!!」

とにかくいい気分。
イロは会場に届くように叫んだ、
叫んで
叫んだ。
勿論、掻き消され届かない。
それでもイロは叫んだ。
歌声が本物で彼女が本物である事を確認したくて
自分が今ココいる事を確認したくて。