青空と入道雲の写真は恭子の写真を爽やかに明るく演出し。
梢から煌めく朝露は恭子の写真の黒い影に光を与える。
嵐の海は歌う恭子の果てしなく深い瞳と同じ色をしていた。

周りの写真を恭子の写真がつなぎ一つにしている。
恭子の写真にはそんな特別な魅力を感じた。



沢山の写真があるイロの部屋。
恭子の写真以外に人物を撮った写真がもう一つ額縁に入って飾ってあった。
制服姿のイロを同級生の二人の男女が左右に並んでいる写真。
タイマーで撮ったそれは歳より幼くみえる。
それは笑顔のせい。素直に溢れだす笑顔は高校生のイロ達に小学生のような表情をあたえる。

見る人間までも温かい気持ちにさせる。
何がそこにはあるの?
どいしてそんな幸せそうなの?
どんな楽しい事があったの?
思わず聞いてみたくなる。
三人の表情がそうさせる。
けれど実際その時のイロ達は何があったわけじゃない。
それが当たり前の毎日、
毎日が幸せ。
三人でいれば何をしてても楽しくて、ただ写真を撮るだけでこんな幸せをつくりだせた。
今はどうだろ。
同じ笑顔がつくれているのか、イロはこの写真が目にはいると自分に問い掛ける事がある。

「大丈夫、今夢中だから。」

イロは笑顔で写真の中の自分以外の二人を見つめた。

それから額縁を恭子の写真の正面に置き。
「彼女にね。」
恭子の写真を指指してもう一度イロは二人を見つめる。

額縁はそのままで

思い立ったイロはいつものカメラを持ち、部屋を飛び出した。