時間にしたらほんの一、二秒。
マサキにしたらキョンが堪えきれず吹き出すまで、何倍も時間の流れが遅く感じた。

動きだした時間の中には腹を抱えて笑い続けるキョンの姿があった。

マサキは呆気にとられていた。

「もしかして"ヤキモチ" 焼いてんの!?」

図星。
また耳が熱くなる。

「キャラ違うよ、もういいからさっさと片付けようよ!」

なおもまだキョンは笑いがおさまらず歩きながらお腹をおさえていた。

先に進むキョンの後ろ姿、笑いを堪えようと肩を震わしている。

マサキのなかには今、恥ずかしさより、悲しみの気持ちの方が勢いよく膨らんでいた。

ただ純粋悲しい。

キョンから見る自分はいったい何なのかな。

バンド仲間。

そうだけど。

それだけじゃなくて。

今まで格好つけて、気持ちを押し殺していた事を今更後悔した。

マサキはキョンまでのほんの数メートルを駆け寄る。

笑い続けるキョンの肩を掴んだ。
キョンは笑い過ぎて涙目になっている。

「ゴメン、完全にツボにはいった。」

マサキを見たキョンはまた声に出して笑いだす。

マサキは空いている手でもう一方の肩も掴む、両手で掴まれる形になりキョンは本能的に身構えた。

マサキの顔には表情がなかった。

「キョン。
・・・。
冗談じゃない。
勘弁してくれよ、驚いて息止まったじゃんか。
ヤキモチなんて焼くわけないじゃんか。
だってキョンは・・・。」
キョンに口をおさえられるマサキ。
「おっとそれ以上は言うな。
また、男だの妖怪だの言おうとしただろ。
それはそれでムカつくから。」

手を離されたマサキの口は笑っていた。
意地悪そうに。

「正解!?」
マサキはキョンの顔の前に親指を立てる。
「だよな~!」
キョンもまた吹き出した。

今更。
今更だよ。


マサキは聞こえないように小さく、小さく呟いた。