そして願ったのだ。
いつかこんな顔をできる自分になりたいと。
そんな風に想える相手に出会いたいと。
だからこそ、龍之介は父親に憧れた。
幼い日に描いた小さな夢。
それは今、腕の中で不思議そうにこちらを見ている存在によって現実となった。
孤高の狼と周囲から勝手に呼ばれ続けている龍之介。
正直あまり好きになれない呼び名ではあったが、狼もこういう意味でなら悪くないかもしれない。
そんな思いに自然と龍之介の口元が緩む。
「俺、避けられて傷ついたんだかんな」
そう言った龍之介の声は本人が思っていたより拗ねたように聞こえて。
本当はもうそんなことどうでもいいのだけれど。
せっかく優衣がその胸のうちを伝えてくれたのだから。


