例え、龍之介の怒りの矛先が自身の父親であったとしても。


例えその結果に悲しむことがあったとしても。


それでも謝ってほしくはなかった。


それが龍之介からの想いだと確かに感じたから。




─────『大丈夫だから。俺がいる。守るよ、絶対』




部屋から飛びだすとき、躊躇う優衣に掛けられた言葉。


それが優衣の頭の中を過り、確信を与えてくれる。




(龍くんは、守ってくれるんでしょ?)




優衣にとって今一番に信じるべきは龍之介の背中なのだ。


そんな優衣のか細い声に振り返った龍之介は優衣の額に一度だけ軽く口付けると、再び父親の方へ体を向ける。


"目、瞑っとけ"と一言だけ残して。


素直に目を瞑った優衣の耳に届いたのは、大好きな人の大好きな誰よりも強い声。