肩に顔を埋め子猫のように擦り寄る優衣。
それに応えるように龍之介も腕の力を強めた。
会えなかった時間を埋めるように互いの名前を呼び合う二人。
幸い今は人通りの少ない時間である。
二人の甘い時間を邪魔するものはここにはいない。
ただ一人を除いては。
「おい!お前 誰だ!?」
バンッという大きな音とともに開いた玄関の扉。
そこから勢い良く出てきた人物に龍之介と優衣は目を見張る。
どことなく優衣に似たその男。
それは紛れもなく優衣の父親で。
やはり家に居たのかと思わずぐっと眉を顰めた龍之介。
父親の怒鳴り声に優衣の肩がびくりと大きく揺れる。
そんな優衣の反応を見た龍之介は、反射的に優衣の体を自分の背中に隠した。


