日に日に増していく罵声と暴力。

比例するように色濃くなるあざと落ちていく優衣の体重。


家の中は荒らされたように物が散乱し、酒の空き缶やビンがあちこちに転がっていた。


まるで泥棒が入り物色した後のような。

玩具箱を引っ繰り返したようなそんな光景。


家中に充満するのはきついアルコールの臭い。

それは染みついた臭いだけでも酔ってしまいそうなほど。


そしてこの日。父親からの暴力は遂に次の段階へと進みかけていた。




「やっ!やだぁ…!!」




ガシャーン



何かが割れる音とともに床に零れた酒。

どうやら割れたのは酒のビンだったらしい。


すぐに階段を駆け上がる小さい足音が聞こえ、数秒遅れてそれを追い掛ける覚束ない足音が家の中に響く。