それでも優衣は頑なにそのことを口にしようとはしない。
それが例え大切な幼なじみと親友でも。
例え二人が怪我やその理由を知っていることに気付いていても。
「りゅ…くん…」
小さく身じろぎしながら呼ぶのは大好きな人の名前。
それと同時に何かを求めるように伸ばされる手のひら。
時折強く握り締められるそれは何かを探しているようで。
どうやら優衣は夢の中でも龍之介の姿を追い掛けているようだ。
閉じた瞳からゆっくりと頬を伝った涙が乾いたコンクリートに染みをつくる。
静かな授業中。
そんな優衣の姿を見た生徒は一人もいない。
見ていたのは、今日も変わらず世界を照らし続けている太陽だけ。


