(泣いたら、また…嫌われ、ちゃう…っ)
龍之介に嫌われる。
それは優衣にとって何より怖いことで。
"触んな"
"いちいち泣くな。めんどくせぇ"
頻りに甦る言葉たち。
そう言った龍之介の顔と声色が優衣の頭から離れない。
至極嫌そうに優衣を見たあの瞳に、井上の言葉が本当だったのだと思い知らされた。
"泣き虫のお守りは大変だ、早く解放されたいって"
今も井上がここにいるかのように鮮明に覚えているその台詞。
それでも。
例えそれが真実だったとしても。
「好き、…なんだも…っ」
そう苦しそうに吐き出したかと思うと、ふらっと横に傾いた優衣の体。
ぱたりという音とともにその場に倒れたかと思えば、次に聞こえたのは小さな寝息で。


