音とともに力なく手からすり抜けゆっくりと優衣の足の間へと落ちた携帯電話。

その音は優衣の心の声のように切ない。


龍之介の声が聞きたいと、龍之介に会いたいと優衣の中にいる優衣が必死に悲鳴を上げる。


会えなかった時間で優衣は嫌というほど理解させられた。


井上や他の誰かに何かを言われるより、どろどろとした黒く醜い感情を抱えるよりも龍之介に会えないことのほうがずっとずっと苦しいのだと。




(会いたい、よぉ…!)




「っ」




ツキンツキンと絶え間なく痛むのは胸のうんと奥の方。


その痛みと同時にぶわっと揺れる視界。


それが涙だということはすぐにわかった。


しかし優衣は膝を抱え、ぐっと奥歯に力を入れて涙が流れるのを堪える。