眉を顰めたままそう言う夏希に健は小さく頷いた。
(相変わらず凄いな)
健は思う。
夏希の口から"父親"という単語こそ出てこなかったが彼女は知っているのだろう、と。
優衣に出来る怪我の理由を。
それくらい夏希は優衣のことをよく見ている。
そして彼女の洞察力は侮れない。
だからこそ、健も隠すことなく話を続けた。
「…最近、珍しく親父さんが頻繁に家に帰ってきてるみたいなんだ」
優衣と龍之介の仲が本格的に抉れてから今日で早一週間。
優衣の自宅に父親の所有している車が停まっているということに健が気付いたのはここ三日のこと。
しかし幼なじみとはいえ、実は健の家は優衣の家の隣にあるわけではないのだ。