本人は隠しているつもりでも、その事実は歴然であった。




「…あの子…本当、大丈夫なわけ?」




昼休みも終わり午後一番の授業が始業を迎えたこの頃。

この時間には誰にも使われていないはずの空き教室から聞こえてきた声。


女のものと思われるその声は心なしか焦りを含んでいるように聞こえた。




「大丈夫…とは言えないか、も」




それに答えるように聞こえた声は今度は男のもの。

苦笑いを感じさせるも、その声は些か不安定な色をしている。


その声色に女が息をのむのがわかった。


暗い空き教室の中。

電気をつけることもせずドアについている小さな窓と、カーテンの隙間から漏れる午後の木漏れ日だけを頼りに向き合っているのは健と夏希の二人。