何より優衣は知られたくなかったのだ。
自分が正体のわからぬ汚い感情を抱えていることなど、龍之介には絶対に。
(嫌われたく、ない)
しかしそんな優衣の切実な願いとは裏腹に、龍之介はその顔を更に険しく顰めた。
どうやら押し黙った優衣の無言を肯定と受け取ったらしい。
大きな体全体から怒りのオーラが滲み出ている。
「…ちっ!あの男が言ってたの、本当だったっつーことか…!」
一瞬俯き、苦々しく顔を歪める龍之介。
顔が隠れてしまったため、その表情は優衣には見えない。
舌打ちとともに小さく吐き出したその言葉も、優衣の耳に届くことはなかった。
苛立つ龍之介の前で優衣はただただ視線を下げスカートの裾を握り締めるだけ。


