名前も知らないその感情を自分一人ではどうにも制御出来ない優衣は、龍之介の目から逃れようと視線を泳がせるしかなくて。


そんな行動が更に龍之介の機嫌を悪化させる。




「ふざけんな。用があるだとかなんだとか。毎回理由つけては俺から逃げ回ってんじゃねぇか」


「………」




ジリジリと間合いを詰め追い詰めるよう優衣に迫ってくる龍之介。

それから逃げるように少しずつ後退りしていた優衣だったが



とんっ




(…あ…)




遂に壁ぎわまで追い込まれてしまった。


だんっと龍之介の両手が大きな音をたてて優衣を挟み込むように両脇に叩きつけられる。


目の前には龍之介の体。


前後左右を固められ、もう逃げ道は残っていない。