今の自分が殴られる瞬間に見える酷く歪んだ父親の顔と同じ顔をしているような気がして。



"彼女がいなければ"



そう、言ってはならない言葉を口走ってしまいそうで。


そんな恐怖が更に優衣を追いつめていく。




「…っふぇ…」




声とともに溢れる堪えきれなかった涙。

大きな雫はぽたりと音をたてながらスカートの裾に跡を残した。


龍之介に貰ったはずの言葉を今の優衣は思い出すことが出来ない。


心の中を巣食っていくのは黒い感情。


もう、自分ではどうしたらいいのかわからない優衣。


ただ苦しくて。

どうにかこの苦しさから抜け出したくて。



そんな優衣に出来たのは




「優衣!」


「っ」




龍之介から逃げ出すことだけだった。